先日部下とタスク管理について話をする機会があって、お節介にも日頃思っていることをたくさん話しました。彼は多忙で重要なプロジェクトの要を担う、とても優秀なSEです。ですが、ちょっと心配なところがあるのです。
緊急重要な仕事だけなら自力でなんとかなってしまう
彼のポジションは顧客や他社の間に入るクッション的な役割ですので、非常にフレキシブルな対応が求められます。明日の予定が当日の夜中に決まることもよくあることです。
しかし彼は持ち前の記憶力とメーラー、少々のメモのみで、緊急かつ重要な仕事に十二分に対応できてしまうのです。タスクやスケジュールなどの外部システムに完全依存している私とは対照的に、ほぼマイ コンピューター(要するに頭脳)で仕事を回しています。
会社のいち上司として彼を評価するととても素晴らしい人材に映ります。勤務態度よし、成果物の品質よし、そしてその仕事っぷりにいつも感心します。ですが、もう一歩踏み込んで、彼の私生活に耳を傾けると印象がだんだんと変わってきます。
緊急ではないが重要な人生計画がお留守になりがち
私の心配は、彼が仕事に対して盲目的なほど全力を出し過ぎていることです。彼の帰宅時間を考えると、一日の仕事を終えて身の回りを整えるともう寝る時間になってしまうのです。それでも(本人にとって)日々の生活は、とても充実した時間に感じられるはずです。全力を出すに値するポジションを得てバリバリ仕事をする、これはとてもステキなことだからです。
ですが、彼自身が時折将来に不安を感じるのと同じように、第三者から見るとその生活は自転車操業のように見えるときがあります。
彼はその場(その日)の問題を片付けるのにかかりっきりになっているとも言えるからです。
本当に重要なことは、目先のことだけではありません。仕事に限定して先々を考えたとしても、彼の仕事ぶりが歳をとっても同じパフォーマンスを保てると思えませんし、ITバブルがはじけた今、グローバル化が進み海外から優秀な人材が流れこんできたら、人件費の高い日本人SEはお払い箱になってしまう、かもしれません。目先の問題も大事ですが、今のうちから将来に備えるための時間も確保すべきなのです。
途方もなく遠いゴールでも、今できるタスクを愚直に終わらせた先に必ずある
漠然と将来のことを考えても、何も手がつけられません。まず、ご自身がやりたいこと、なりたいもの、そして気になること、これらをできるだけ明らかにし、今できることをひとつずつやっていくのが一番の近道ではないかと思います。
ポイントは、時間の前後を意識しないことです。今日を必死に生きている方にさらなる期限を追加するのは酷な話ではないかと思うのです。私にもそんな時期があり、確かにこの感覚がありました。期限をつけても、本当に取り掛かれるのか当日になってみないとわからないのです。だから愚直にも寝るまでに「今」できることをやるのです。システマチックに期限を付けたり、階層化したりするのはもう少し楽になった後からです。もちろん「今」できることをやるだけでも、とてもたいへんなことでしょう。
彼に私の本意が伝わったのかはわかりません。どんなに多忙なプロジェクトでもいずれは終わりを迎えます。終わるのをひたすらに待って今の気持ちを忘れてしまうのもよし、自律的に将来に目を向けて現実を変えていくのもよし、どちらを選んでも幸せなことには違いありません。ご自身のかけがえのない人生ですから後悔のない選択をして欲しいと思います。